2つの例を紹介します。1つ目。
昨年度の全校生徒数は730人であったが、本年度は男子が5%増加し、女子は6%減ったので全体では2人減少した。本年度の男子、女子の人数をそれぞれ求めなさい。
一般には昨年度の男子、女子の人数をそれぞれx, yとします。これは, 5%, 6%は昨年度に対してだからです。
では、本年度の男子、女子の人数をそれぞれx, yとするとどうでしょうか。本年度の人数を求めよといわれているので本年度の人数をx, yとする方が自然に思えます。
これはできなくはありません。推奨はしません。しかし、やらないのは勿体ない。連立方程式を正しく作れるかどうかやってみてください。そして、止まらずに解けるでしょうか。
そこでどう工夫するかが、より難しい問題を解く時に役立ちます。(連立方程式の解き方がまたいくつか考えられます。)本当の技術は一般的な(比較的容易な)方法で解くだけでは得られません。「こうやってもできるのか?」という好奇心と、実際にやってみるということです。
もう1つ。
銅と鉛を4 : 1に混ぜた合金Aと、銅と鉛を7 : 3に混ぜた合金Bがある。これらを混ぜて、銅を700g含む合金900gを作りたい。合金Aと合金Bをそれぞれ何g混ぜればよいか。
一般には合金Aと合金Bの質量をそれぞれx [g], y [g] として、「700g」「900g」に注目して
\begin{cases} \frac{4}{5}x + \frac{7}{10}y = 700 \\ x + y = 900 \end{cases}
を解きます。しかし、鉛に注目することもできます。そうすると
\frac{1}{5}x + \frac{3}{10}y = 200
という方程式も作れます。さて、未知数2個に対して方程式が3本?ということになります。
\begin{cases} \frac{4}{5}x + \frac{7}{10}y = 700 \\ \frac{1}{5}x + \frac{3}{10}y = 200 \\ x + y = 900 \end{cases}
実は3本のうち2本を加減すると残りの1本が得られます。つまり見た目には3本でも中身は2本です。3本のうちどの2本を選んで解いても同じ結果になります。これは大学で習う「線形代数」に発展します。